1回の胚移植あたりの妊娠率を高めています

不妊治療は、心にも身体にも大きな負担がかかる治療です。「あと何回続ければいいのだろう」と不安になることもあると思います。
医学的には「累積妊娠率」という考え方があります。回数を重ねれば、最終的に妊娠する確率は上がる、という考え方です。
しかし私たちは、ただ回数を重ねるのではなく、できるだけ少ない回数で結果につなげることを大切にしています。
そのために、「1回の胚移植あたりの妊娠率」を高めることに力を注いでいます。
当院4年間の成績
当院の胚移植1回あたりの妊娠率は60.0%(30〜39歳)です。これは、1回の胚移植で約6割の方が妊娠に至っていることを示しています。
もちろん年齢や背景によって成績は異なりますが、私たちは常に「1回の質」を高める取り組みを続けてきました。その結果、過去の成績と比較しても、妊娠率はさらに向上しています。
※30〜39歳の2020年〜2023年の計2515症例
なぜ「1回あたりの妊娠率」にこだわるのか
不妊治療において、「回数を重ねればいつか妊娠する」という考え方は間違いではありません。
しかし実際には、何度も陰性判定を聞く精神的な負担があり、ホルモン治療や採卵の身体的負担、治療費の継続的な負担の3つの負担が存在します。
また、時間はとても重要な要素です。皆さんご存じの通り、年齢とともに卵子の質は変化します。だからこそ私たちは、1回の移植をできるだけ妊娠につながりやすい状態で行うことを重視しています。
そのため、当院では生殖補助医療(ART)専門の医療機関として、ホルモン補充周期にて凍結融解胚移植の方法をとりながら、整った環境で自信を持って移植を行っています。
ホルモン補充周期と凍結融解胚移植とは
妊娠率を高めるためには、「よい胚を選ぶこと」だけでなく、子宮内膜の状態と移植のタイミングを最適に整えることがとても重要です。
当院では、採卵と移植を同じ周期で行うのではなく、いったん胚を凍結保存し、ホルモン環境を整えた周期で移植する方法を基本としています。これにより、胚と子宮内膜のコンディションをそれぞれ最もよい状態に整えたうえで移植を行うことが可能になります。
ホルモン補充周期とは
胚移植を行う際、子宮内膜(受精卵が着床するベッドのような場所)の状態を整えることがとても大切です。
ホルモン補充周期とは、お薬(エストロゲンとプロゲステロン)を使って子宮内膜を整え、移植のタイミングをコントロールする方法です。
通常、自然な排卵周期では、排卵前にエストロゲンが増えて子宮内膜が厚くなり、排卵後にプロゲステロンが増えて着床しやすい状態になるという流れがあります。ホルモン補充周期では、この自然の流れをお薬で再現します。
排卵の有無に左右されないため、移植日を正確に設定でき、内膜の状態を安定させやすい、排卵が不規則な方でも治療が可能というメリットがあります。
当院がホルモン補充周期を大切にしている理由として、採卵周期は排卵誘発によってホルモン値が大きく変動します。その影響を受けたまま移植するよりも、いったん体をリセットしてから内膜を整えた方が、より安定した環境で移植できると考えているためです。
特に凍結融解胚移植では、内膜の厚さや血流、ホルモン値を確認しながら、その方に合わせて細かく調整します。「その人にとってのベストなタイミング」を作れることが、ホルモン補充周期の大きな強みです。
なお患者様によっては自然周期も実施しています。どちらを選択するかは、医師の診察と胚の状態などを考慮して決定いたします。
凍結融解胚移植とは
凍結融解胚移植とは、採卵後に受精した卵(胚)をいったん凍結保存し、後日あらためて融解して子宮に戻す方法です。現在では、多くの施設で主流となっています。
採卵周期は排卵誘発の影響でホルモンバランスが大きく変化しています。その状態では、子宮内膜が必ずしも最適とは限りません。
そこで、良好な胚を凍結保存し、ホルモン環境が整った周期に移植するという方法をとります。これにより、胚の質がよい状態と内膜が整った状態の着床に理想的な組み合わせを作ることができ、妊娠率を高めることが可能です。
タイムラプスインキュベーターによる培養環境の向上
タイムラプス培養とは、インキュベーター内で胚を連続撮影し、発育過程を詳細に観察する技術です。
従来は観察のために胚をインキュベーターから取り出す必要がありましたが、タイムラプスでは取り出すことなく評価が可能です。これにより、
- 温度・ガス環境の変化を防ぐ
- 胚へのストレスを軽減する
- 発育過程を正確に記録できる
といったメリットがあります。
さらに、分割スピードや細胞分裂のパターンを解析することで、より妊娠につながりやすい胚の選択精度向上が期待できます。胚に触れずに評価できる培養環境そのものが、ラボの質を示す指標でもあります。
当院では、このタイムラプスインキュベーターを利用することで培養環境の向上を図り、1回の胚移植あたりの妊娠率を高めています。